Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「これは先生が……」
「え、なに、クッキー命令なの?」

 ピタリと動きを止めた香澄は眉を顰め、紗綾はコクリと頷く。

「黙って立ってれば絶対大丈夫だって……」

 本当に大丈夫なのかなぁ、と呟いて紗綾は俯く。
 オカ研におけるツートップの黒いオーラに圧されて渋々出てきたものの、不安が大きくなる。

「ま、まあ、幸運を祈るわ」

 顔を上げればいつも明るい笑顔がチャームポイントの親友の顔は、明らかに引き攣っていた。

「助けて、香澄」

 いつも頼りになる親友に縋り付けば、彼女はひどく慌て始める。
 いつもなら胸を叩くところなのにらしくない。

「む、無理よ! クッキーに逆らったらどうなると思ってるのよ!?」

 先生は怖くないのに、と紗綾は思う。
 香澄はなぜかいつもクッキーことオカルト研究部顧問でありクラス担任の九鬼嵐(くきあらし)を恐れている。

「わ、わたしも部員勧誘しなきゃ! あんまり油売ってると、うちの部長も怖いし、引き留めなきゃいけないから……じゃあね!」

 紗綾も待ってとは言えなかった。自分のせいで彼女が先輩などに怒られるのは嫌だった。


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