【完】キセキ~君に恋した時間~
やがてステージまでどうにかたどり着く
と、タオルにくるんだ保冷剤と、冷えた
スポーツドリンクを手渡してくれた栄生
君。
「タオルで首もととか冷やして。それと
脱水症予防とかのためにも、これはしっ
かり飲んどいてね」
「……ありがとう……ございマス」
……ていうか栄生君が俺をバスケ部に誘
ったりしなきゃこんなことにはならなか
ったのに。
そう思うのだけど、どうしても栄生君を
見てると、毒牙を抜かれてしまう俺。
栄生君の爽やかさに浄化されていくんだ
よね、うん。
保冷剤を首筋に当てると、ひんやりとし
た心地よさが身体に広がっていく。
俺はその心地よさに身を委ねながらも、
辺りを見回した。
「……ていうか、栄生君だけ?」
体育館にはどこからどうみても、俺と栄
生君の二人きり。
俺がそう言うと、栄生君は少し笑った。
「ちょっと前まで部活だったんだけどね
。先生に言って、今は貸してもらってる
んだよ」