【完】キセキ~君に恋した時間~
ふーん、と呟きながらまた、体育館を見
渡す。
いつも授業でしか来ないから、こうも人
が居ないとなんだか不思議な感じだ。
「よし、じゃあ始めようか」
ふと、突然そう言って、立ち上がった栄
生君。俺はそんな栄生君を見上げる。
やけにはりきってるな、栄生君。
「始めようかって、何を?」
俺がそう言うと栄生君はニッコリと笑っ
た。
「徹くんがどれだけすごい人材なのかを
、身をもって教えてあげようと思って。
ほら、行くよ」
そう言って俺を立ち上がらせた栄生君。
その勢いで、手から保冷剤がすり抜ける
。
……ああ、俺の癒しの保冷剤が……!
栄生君に引きずられながら、俺は暫く、
もうほとんど溶けかけた保冷剤を見つめ
ていた。