散華の麗人
――忘れもしない。
あれは、私が傭兵になる前
6歳の秋だった。
私が住む“竜華国”はいくつもの争いに勝ち、土地を広げてきた。

竜華国は現在の成田の一部といろんな国に少しづつ領土を取られている。
今残っているのはは本当に小さな国だ。
私の故郷は辛うじて国境寸前のところに位置している。
武力が強く、永久中立国だ。
この国は昔から傭兵稼業する人が多い。

当時は、現在の細川国……一正が治める国と同じくらいの勢力を誇っていた。
『国王陛下万歳!!国王陛下万歳!!』
民衆は皆、そう言った。
ここの国王は権力を振り翳し、力で民衆を蹂躙する。
そんな男だった。
『控えい!!陛下のお通りであるぞ!!』
兵士の声がすれば、町中が平伏した。
私は母様と共にいた。
母様は国王に平伏したが、私はしなかった。
『風麗!』
平伏したままで私を睨みながら、母様は言う。
『あいつのせいで父様が……』
私は立ったまま国王を睨んだ。

父様はこの度の戦で亡くなった。

全ては国王の為にと犠牲になった。

それが、許せなかった。

『国王!!これがあんたが望んだことか!!私はあんたを許さない。この、人でなし!!』
力の限り叫んだ。
『この者を引っ捕らえよ!』
国王の命で私は兵士に捕まえられた。
『お待ち下さい!!その子の代わりに私が!!』
母様はそう叫びながら、兵士達を押し退けた。
私のせいで母様まで巻き込んでしまった。
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