散華の麗人
私は牢に入れられた。
その中で、兵士と母様の会話が聞こえた。
『どうか、どうか、あの子の命だけは……』
『いいのか?死んでも知らねぇぞ。』
『私の命はいいです。あの子が助かるなら』
その会話を聞いて、私は理解した。
母様は私の身代わりになるつもりでいると。

今思えば当然だ。
我が子を大切に思うのが、母親というものだ。

後に母様は処刑された。

『風麗。貴方は強く在りなさい。』

『母様ー!!』

私はただ、見ていることしか出来なかった。


その時、私は思った。

私が1番強い存在になる。
そしたら、父様や母様を殺した国王を倒せると。

国王は民のことを考えていない。
権力を振り翳し、民を蹂躙する存在だと思った。

けど、違う。
この細川国の国王は民を大切にしている。
馬鹿でどうしようもない国王だが、彼は……

(1番の国王だ。)
風麗はそう思いながら微笑んだ。
自分が理想とする国王に会えた喜びと、それにこれから仕えるという嬉しさ。
そして何より、この先にある彼が創る世界への期待に笑みがこぼれた。
< 18 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop