散華の麗人
襖越しに、静かに言う。
「俺に未来が望めるのならば、願いが叶うというのならば……あの、餓鬼の……愛おしい餓鬼のくだらない戯言をもう一度聞きたい。」
そうして“煩い”と返してやる。
貴様の顔も見ずに。
襖越しの一正には意図は解かれど、相手は知らない。
茶々も風麗もそれは同じだ。
ただ、雅之にはもう会うことが許されない者だとは解る。
それは、使命感と恐れなのだろう。
何もかもを切り捨ててきた男が唯一を失うことを恐れている。
「臆病者。」
風麗はそう評した。
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