散華の麗人
そして、前を見据えた。
「……少し、昔話でもしましょう。急いても変わりませぬ故。」
「認可しよう。」
雅之は話に耳を貸した。
「私にも、大切な人がいました。」
風麗は懐かしむように目を伏せた。
「昔、幼い頃に……よく一緒に話していました。その人は、身元は明かさずに朗らかに笑っていた。でも、ある日、解ったのです。その人は国王の後継だと。」
「城を抜け出してほっつき歩いていたといったところか。」
「ふふっ、おかしなひとでしょう?」
雅之に答えて笑う。
「やがて、その国は清零国に滅ばされた。以来、消息が解らない。……死んだと見て、間違えないでしょう。」
風麗は悲しげに笑む。
「だから、大切な人の居場所が解っていて、守れる位置に居る貴方が羨ましい。」
「貴様の羨望など知るか。」
雅之は冷たくあしらう。
「……少し、昔話でもしましょう。急いても変わりませぬ故。」
「認可しよう。」
雅之は話に耳を貸した。
「私にも、大切な人がいました。」
風麗は懐かしむように目を伏せた。
「昔、幼い頃に……よく一緒に話していました。その人は、身元は明かさずに朗らかに笑っていた。でも、ある日、解ったのです。その人は国王の後継だと。」
「城を抜け出してほっつき歩いていたといったところか。」
「ふふっ、おかしなひとでしょう?」
雅之に答えて笑う。
「やがて、その国は清零国に滅ばされた。以来、消息が解らない。……死んだと見て、間違えないでしょう。」
風麗は悲しげに笑む。
「だから、大切な人の居場所が解っていて、守れる位置に居る貴方が羨ましい。」
「貴様の羨望など知るか。」
雅之は冷たくあしらう。