散華の麗人
そこでは家臣が働いている。
「わしは、ここが好きや。民も家臣も上下関係なく、同じ人間として見える。」
一正はそう言いながら、手を伸ばした。
「……皆が笑える世界。それがわしの理想や。現実は違うけどな。」
そして、空を掴んだ。
「成田国はもちろん、この世界をわしのものにする。……民が笑える世界をわしが作る為に。その為の戦なら、惜しむことなく力を使う。例え、どんな犠牲があっても、未来は必ず明るくなると信じてな。」
そして、真面目な表情で風麗を見た。
「頼りにしている。」
その言葉に、是の返事はない。
「……そんな真面目な顔をして、変なものでも食べましたか?」
風麗は返事の代わりにそう言って、口の端を上げた。
「あんたなぁ……せっかく、真面目な話をしてるのに茶化すなや。」
「陛下に真面目な顔は似合いません。………それに、真面目な話をいつも茶化しているのはどこの誰でしょうねぇ?」
「わしやけど……ヒドイ言われようやな。」
一正は苦笑した。
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