散華の麗人
埃はなく、整頓されている。
「それと。」
陸羽は奥から長い刀を出した。
それは、茶々の背丈よりも長い。
「これは“桔梗”と言う。……儂の唯一無二の実兄のものだ。」
「桔梗……」
(綺麗な刀だ。)
陸羽が刃を見せると、茶々は見惚れる。
紫掛かった鞘と漆黒の峰に白銀の刃。
華と呼ぶに相応しい美しさだ。
「これをぬしにやる。……ぬしはあやつにどことなく似ておる。」
「勿体無きことでありますが、私は」
「受け取れ。」
「……はい。」
茶々は刀を受け取る。
「刀はひとの生き様を表す。命よりも尊きものだ。心得よ。」
「はっ。」
茶々は深々と礼をした。
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