散華の麗人
その視線を一正は真っ直ぐに受け止める。
「……愛してもその悪を知り、憎みてもその善を知る。」
「ふん、諺か。随分と貴様にしては賢い事を言うものだ。」
「良い面も悪い面もあるんは人間だけやない。」
「何故、貴様はそこまで言う。自分が両親を亡くしたからか?乳兄弟だからか?」
「両方や。」
「言ったはずだ。解り合えないと。何度言わせる。」
「何度でも。」
そう言って手を離す。
「あんたが解るまで。」
「それは根気が要ることだな。」
景之は溜め息混じりに言う。
「お互いに憎んでいるのだ。今更変わりはしない。」
そう言い残して去って行く。
「家族なのにどうして……」
辻丸はそう呟いて景之を追う。
「……お互い、か。」
一正は無力さに自嘲する。
< 631 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop