散華の麗人
鍛錬場には細川分城の兵士がいる。
「ご苦労。」
リアンはそれを見回して一礼する。
「清零国の軍師が」
そう誰かが言ったのが耳に入った。
月夜は其方を見る。
リアンは“気にすることではありません”と笑顔で窘めた。
「何しにここへ?」
松内が歩み出る。
彼はここの兵士ではないが、家老として様子を見に来ていたらしい。
「貴方が陛下の家老として此処の様子を見るように、僕も軍師として此処を見に来たのですよ。」
優しく言う言葉に松内は「そうか。」と応えた。
「存分に見るがいい。陛下が築いてきた兵の力を。」
自慢気に言う言葉に負けじと周囲の兵は鍛錬に励む。
「……率直に言わせていただきますと。」
リアンは辺りを見回す。
「個々の能力には申し分ないです。」
「その口振りは、“協調性がない”とでも言いたげだな。」
「そうです。」
松内の怒りを買うことを覚悟で言う。
「互いが疑心暗鬼になっている心が手に取るように伝わりますよ。」
それは、リアンに対しての不信感のことであり、陸羽派に対する警戒心のことだ。
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