散華の麗人
景之は辻丸の部屋へ荷物を運んだ。
(人間に情けをかけるとはな。)
無表情で思う。

『真実を知ろうとしていない。何が怖い?』
辻丸は景之から視線を動かさずに言う。
『人間を蔑むことで、自分を守っているのか』

(そうかも知れない。)
そう認めてしまう自分が居る。
「どういう風の吹き回しだよ。」
そう言いながら部屋に入る辻丸を景之は見据えた。
「さぁな。」
はぐらかしたわけではなく、自分でも不思議だった。
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