散華の麗人
人間に情けをかけた自分。
“そうかも知れない”と素直に受け入れつつある自分。
ずっと目を背けていた物事へ目を向けようとしていること。
「貴様は変な奴だ。」
そう言い放って立ち去ろうとしたが、辻丸からひょいと両脇を持って抱えられた。
対して背丈が変わらないので、足が僅かに浮いただけだ。
「何だ?喧嘩を売っているのか。」
「いや、何となく。」
「“何となく”で城主を抱えるな。」
景之は相変わらずの無表情で淡々と返す。
「お前見てると、弟が出来た気分になるんだよ。不思議だな。」
「……それは俺が何歳か解っていて言う言葉か?」
まじまじと見つめる辻丸に景之が呆れる。
「あの一件を何と解釈したかは知らないが、人間を憎む心は今も変わらぬ。……これから先も、だ。」
そう言って辻丸を睨む。
「人間風情が馴れ合うな。離せ。」
「うんうん。世話焼ける弟だわ、こりゃ。」
「戯け。」
「いてっ!」
殺気を込める景之に辻丸が茶化すと、景之は思いっきり顔面に蹴りを入れた。
幸い、辻丸は打たれ強かった。
「本当に、変な奴だ。」
景之は立ち去った。
「罵倒は変わらないのに、最初に思うよりも嫌な奴に見えないから不思議だな。」
辻丸が言ったこの言葉が耳に届いていたら、次は殺されているかもしれない。
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