散華の麗人
部屋に入ると漸く雅之が話し始めた。
「俺が先ず、陸羽派の動きを調べる。貴様は柚木との約束通りに兵士への給与を上げろ。少なくとも2割だ。」
「んな!!?」
一正が慌てふためく。
「そんなん無理や!!」
「戯け。」
雅之が傍にあった座布団で一正を殴る。
“ごほぉっ”という声を上げて一正は床に叩きつけられた。
「やるんだ。」
威圧感しか感じない声音が一正に追い打ちをかける。
「此度の課税により、実現出来るはずだ。それと、今回の戦争被害による損害賠償を敗戦国に求めていないだろう。」
「成田はわしの配下になった。それでええやろ。」
「よくない。財力を残せば付け上がるだけだ。」
雅之に一正が不満げにする。
「冷酷になることも時には必要だ。」
諭すように言う。
「成田城が八倉家の所有になることにおいて、八倉家当主の立ち位置を確立する必要がある。もし、陸羽派につくのならば即刻対策が必要だ。」
「それは研究のことをを危惧してか?」
「当然だ。話は知っている。あんな外道な秘薬を開発しておいて、ここで留まると思うか?」
一正に雅之は言う。
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