T&Hの待望
私立名山高校は、名の通った進学校である。
学生のアルバイトは禁止され、家の事情等例外の場合も、校長の許可が必要だ。
伸一は以前、自宅近所のコンビニでアルバイトをしていた。
たまたま客として担任がやって来た事。
たまたま許可なく無断でやっていた事。
この不運が重なり、黒川伸一のアルバイトは今後禁止となったのである。
「……もっと派手に客寄せしちゃうとか……」
「バレたら二の舞だろうが。俺達の仕事を教師に説明する事ほど無駄な時間はない」
「あははっ! そうだよね! やってる事普通じゃないし! ……あ。ならむしろバレてもいいんじゃない兄貴?」
頭の痛い哀れな兄弟って事で始末されるよ?
「一緒にするな忌々しい」
「おーい黒川ーーっ!!」
伸一の頭が奏でたパチーンという音色が、廊下から上がった声と重なった。