恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~




「いらっしゃいませー」



少し立ち位置を変えただけで、コツンと足音すら響きそうなほど、人気のないフロア。
希に通り過ぎるお客様に、一遍通りの会釈をする。


今日はいつにもまして、暇だ。
続く閑散期に、前倒しで出来る作業ももう残っていない。



「本社に売上報告、気が重いわぁ」



店長のぼやく声。
カウンターの外からは見えないが、内側で店舗用のノートパソコンを開いている。



「でもこの時期、どこの店舗も同じだし、平気じゃないですか」



私は通路側向き、店長に背を向ける形。



「それでも激は飛んでくるのよ。どうしたの、全くやる気ゼロねぇ」



背後からの非難を含む声に、どうもしないですよ、と視線は宙を舞う。


だって左を見れば恵美がいて、前を見れば笹倉が居る。
前後左右でいえば2方向を封じられた状態だ。


結果、宙を見る選択。


あの日、恵美の気持ちに気付いてから。
確証はない、でも確証とることもできない。


私は、恵美とも笹倉とも、視線を合わせられずにいいた。


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