恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
『生きてるか?今どこ?』

「なんですか、ここは戦場ですか。家着いたとこです」



無事確認の電話ですか。
どこまでも世話焼きの藤井さんに、少し癒された。



『いや、冗談だけど。俺も早く終わったから電話してみただけ。今日は何もなかったか?』



こんこんこん。
自分の靴音が階段に響く。



「はい。ポストは異常なかったです。電話は非通知拒否にしちゃったんでわからないですけど」

『拒否しても着信通知はくるだろ?』

「そうでしたっけ?」



余り着信拒否などしたことはなかったので、よく知らない。
首を傾げながら階段を上がって、玄関通路に出ると視線を上げた。



「…?」



私の部屋の前に、立っている人影があった。
夕陽が差し込んだ陰影が濃くて、一瞬誰だかわからなかった。



「……笹倉?」



え?と藤井さんの声が携帯から聞こえた。



「あ、すみません。家着いたので、また電話します」



ぴ、とボタンを押して電話を切りながら近づくのと、うちの前に身体を凭せ掛けていた笹倉が姿勢を起こすのと、ほぼ同時だった。
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