恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
テーブルが低いから、二人で床に座って食べる体勢。



「また、誰かになんかいわれたの」



思いのほか、低くて抑揚の無い声だった。
私にくれるはずだったエビフライを、彼は自分の口に放り込んだので思わず、あ、と声が漏れる。



「誰か、っていうか、うん、それも、だけど」

「藤井さんと飯行ったらしいじゃん」

「は?あ、うん。…なんで知ってんの?」



いつもと全く変わらない空気を作るのがうまいから、怒ってないのかと思ってた。


でも違った。


私の一言で、キン…と冷えた空気。
それは、私が冷や汗をかいた所為だけでは、ない、はず。



「狭山口説きにずっと通ってる会社員がいるって、周りで面白がってるヤツらがいるの、知ってた?噂になってるよ、お前ら」



あの人デカいし、ほんと目立つよなって。話してる間も、彼は淡々と箸を進めていて。


気のせい?
いや、ちがう。
私は、食べる気が失せてしまって、俯いた。


…なんで?
連絡無視してたから?


確かにそれは、私が悪い…から、覚悟してたけど。


思ってたよりもずっと冷たい空気。
その温度差に、戸惑っていたら。



ぱちん、と音がして、彼が箸を揃えてテーブルに置いたことに気がついた。
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