恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
ははっ、と声がした。


そちらを向くと笑う横顔があった。
機嫌悪くなったとか、そういう裏のなさそうな顔だったので少しほっとする。



「そろそろそんなこと言ってきそうな気がしてた」



言いながら、くるるとハンドルを回す彼。
ゆっくりと横に重力がかかる。


私はその横顔を見ながら自分の鼻の頭を指で掻く。



「別に、今のとこ悪戯程度ですし。一人で大丈夫ですよ」

「迎えを口実に飯行って、そのついでにいつか食ってやろうと思って来てんだよ」

「なんですかそれ。」



真面目に話してるのに。
なんだかむっとして、声も唇も尖らせた。



「怒るなって」



ちらりと横目で視線だけを走らせて、また直ぐに前を向いた。



「別にいいだろ、俺が迎えに来たくてやってんだから」



そう言われると言葉に詰まるが。


先を行く車のブレーキランプが、ちまちま点灯する。
そんな細切れにブレーキ踏むとこでもないのに。


些細なことにさえ、いらいらするのはなぜか。


罪悪感がいつまでも私の背中を追い立てるからだ。
さっき見かけた蝙蝠が、いつまでも頭上を飛び回ってる気がして仕方ない。


わかってる。
あの日の笹倉の顔をなかったことにして、また誰かに甘える自分を知られたくないんだ。
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