恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「甘やかされすぎって言ったのは藤井さんなのに」



言い返せない悔しさ紛れに、ぼそぼそと口の中で言ってみる。



「お前って、ほんと極端な上に良くも悪くも素直だよな」

「……素直?」



一連の会話で出てくるとは思わなかった単語に、訝しく眉を寄せて宙を見た。
どちらかといえば、あまのじゃくだと言われれば頷けるのだけど。



「よく言えば素直。悪く言えば、流されやすい、ブレやすい、すぐ真に受ける…」

「悪い方が多いじゃないですか」



まだ続きそうなので早めに突っ込んだ。


自分の中身を分析されてるみたいで、正直気分が悪かった。
だから、終わらせたいのに。



「怒られる、嫌われる、は率直に受け止めるからすぐ泣くし傷つくし」

「もーいいです。そんな話したくないし」

「そのくせ恋愛には臆病で男の好意には警戒心むき出し」



何か言い返そうと、口を開いたまま、言葉を失った。


藤井さんの言葉が、暴かれたくない部分に、触れたから。



「こういう時には都合よく甘えときゃいいんだよ」



…この苛立ちの原因は。


誰に捧げるべきかわからない、後ろめたさの原因で。


それは彼の親切心で。


私を、内側から暴いて解こうとする、無遠慮な優しさ。


それを、受け入れたくないからだ。
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