恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「はい、どうどう」



藤井さんの両手が、私の手をぎゅうっと強く圧迫した。
両手……あれ?


運転していたはずの藤井さんの両手が、あったかい。



「息吸いすぎ。ゆっくり全部吐いてから、ゆっくり吸って」



藤井さん、体ごとこっち向いてる。
言われた通りに、ゆっくり息を吐きながら、目をぱちぱちと瞬かせた。


狭まっていた視界が広がって、周囲が漸く目に入って来る。


どんだけ興奮してたんだろう。


窓の外の景色は既にアパートに着いていて、車は定位置に停車させていた。



「…もう着いてる」



両手で握ってくるからおかしいな、と思った。



「興奮しすぎ。過呼吸でも起こすのかと思った」

「…私も、びっくりした」



ぎゅっときつく手を握られて、そちらへ気が削がれたのが良かったのか、どうにも抑えられなかった息苦しさを伴う不快感のようなものが、薄れていくのがわかった。



「ほら、全部吐け」

「あ、うん」



言われた通りに、ゆっくりまた息を吐く。
深呼吸しすぎるよりこっちのが楽なのだとわかった。



「いや、そうじゃなくて。溜まってるの全部喋れって意味なんだけど」



なんだよ。
そっち?

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