恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
自分の中に、驚く程の不快感が広がって、爆発した。


あれは、何に向けられたのか。
私は握られた手をゆっくりとほどいて言った。


思い当たるのは、一つだけで。



「あんまり、踏み込まないでください」


多分、結構酷いセリフを、つるっと吐いてしまった。


「だって…」



私の心の内側に、するっと入って触れようとした。
ついこの頃自覚した、恋愛恐怖症ともいえる私の内側に。


その部分に触れられるのが嫌だった。


一人で立っていられるようになるまで。


笹倉と交わしたそれは、約束ではないかもしれないけれど。
あの日の気持ちが無になる気がして。


侵入を拒否した結果の、不快感。



「いらいらの原因、俺?」



そう言った彼が切なげに眉を寄せることに、少し胸が傷んだ。
でも。



「そこに触れていいのは」



少なくとも、藤井さんじゃない。


そこまで、口にして我に返る。
浮かんだ顔に戸惑って、口を噤んだ。


彼は、困ったような微笑を浮かべて、あぁあ、と少し大げさな仕草で言った。



「他に好きな男がいますって言われてるような気分」

< 164 / 398 >

この作品をシェア

pagetop