恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
え。


と私は目を見開いた。
そして、慌てて違うという意味を込めて手を振る。



「違いますよ、好きな男とかそんなんじゃなくて…」



そんなんじゃなくて、なんだ?
自分でも突っ込みたくなる。



「笹倉となら、そんな弱みも見せられたってこと?」

「いや、見せられるっていうか、ついこないだそんな話を…っていうかなんで笹倉って」



なんだかよくわからない汗が出てきた。


笹倉以外に誰がいるんだよって藤井さんが呟いた。
不機嫌になったかと思ったが、そうでもなく、笑ってた。


この人も、よくわからない。


「どうすっかな。ゆっくり、信用させてけばいいって思ってたけど」

「…その割に、ぐいぐいきますよね」



急に艶めいた視線を向けられて、わざとふざけてはぐらかそうとしたけれど。


その色は消えなくて、私は少し身を引いた。


けれど狭い車内では距離をとるのも限界がある。
伸ばされてくる彼の指先がどこに触れるつもりなのか、ただ目で追いかけるしかできずにいた。
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