恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
ぴら、と紙をめくる指をとめて、三輪がこちらを向いて不思議そうな顔をした。



「嫌いな人、ですか?」

「そう、もしくは苦手なやつとか」



表情をじっと観察しながら、質問を重ねる。
手にあるボールペンをくるり、くるりと指先で回しながら三輪の答えを待った。


彼女はまた、伝票に目を落としてめくりながらも「んー…」と小さく声を漏らす。



「あ、ほら。こないだ飲みに行った時一緒だった、狭山さんを待ち伏せしてた人。あの人はちょっと苦手でした」

「ふぅん。楽しそうに見えたけどな」

「そりゃ、そのまま顔には出せませんよ」



ざまぁみろ藤井、とか悪態が頭を過ぎるが。
あの男がそんなこと気にするワケもない。



「あの人、狭山さんのとこにずっと口説きに通ってる、って。凄い噂ですよね」

「あー、そうだな。すげぇな」



目の前の口が、ペラペラと滑りが良くなっていく。



「ですよね。狭山さんも、まんざらでもなさそうじゃないですか」



あー…こりゃ。
やっぱり、当たりなのか。


そう。
藤井の電話で照らし合わせたのは、三輪のシフトだった。
恵美ちゃんがどういう経緯で三輪を疑ったのかは知らないが。
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