恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
母のことは気になるし、仕事のことだけ考えれば店長は荷が重いが挑戦してみたい気持ちもある。
決して悪い話じゃないのだ。
ただ、離れがたい友人がいる。5年勤めたこの店にもスタッフにも、愛着がある。
黙り込んでしまった私の心中を察したのか、一条さんが眉尻を下げて笑った。
「さっきも言ったとおりまだ打診の段階だから。ただ断る理由が友達と離れたくないではちょっとまずいかな」
「…わかってます」
見透かされたことが恥ずかしくて、少しむくれてみせた。
そんなことはわかってるが、私にとっては初めての異動の話だ。
少しくらいセンチメンタルになってもいいじゃないか。
「このことは店長以外他言無用ね。来春の話だから、返事はまだ急がなくて構わないから考えておいてね」
そう言い残して、一条さんは本社へ戻って行った。
淡々と話す声が、音声ガイダンスのようにひんやりと聞こえて、けれど一条さんは間違っていない。これは仕事だ。
みんなだって、いつか異動になる。同じ場所にずっとなんて余り聞いたことがない。
ただ躊躇うのは、近場の異動と違って遠く離れること。
恵美や、カナちゃんとは、なんやかんやと連絡を取り合って、友達は続くだろう。
でも、笹倉とはこれを機会にぷっつりと途切れてしまう気がした。
決して悪い話じゃないのだ。
ただ、離れがたい友人がいる。5年勤めたこの店にもスタッフにも、愛着がある。
黙り込んでしまった私の心中を察したのか、一条さんが眉尻を下げて笑った。
「さっきも言ったとおりまだ打診の段階だから。ただ断る理由が友達と離れたくないではちょっとまずいかな」
「…わかってます」
見透かされたことが恥ずかしくて、少しむくれてみせた。
そんなことはわかってるが、私にとっては初めての異動の話だ。
少しくらいセンチメンタルになってもいいじゃないか。
「このことは店長以外他言無用ね。来春の話だから、返事はまだ急がなくて構わないから考えておいてね」
そう言い残して、一条さんは本社へ戻って行った。
淡々と話す声が、音声ガイダンスのようにひんやりと聞こえて、けれど一条さんは間違っていない。これは仕事だ。
みんなだって、いつか異動になる。同じ場所にずっとなんて余り聞いたことがない。
ただ躊躇うのは、近場の異動と違って遠く離れること。
恵美や、カナちゃんとは、なんやかんやと連絡を取り合って、友達は続くだろう。
でも、笹倉とはこれを機会にぷっつりと途切れてしまう気がした。