恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
夜の喧騒が少し遠くに聞こえる場所にいつものパーキングがあり、今日は満車のようだった。
車の隙間を縫って今は見慣れた車にたどり着く。


そのまま、藤井さんは運転席に向かうのかと思ったら、手が離れなくて。
不思議に思って繋いだ手を見つめたら、影が外灯の光を遮った。


「藤井さん?」


車の合間の、狭いスペース。
不穏な空気に、少し腰を退くがすぐに車のボディに背中が触れた。


藤井さんが、高くて、近くて。
車に背中を預けて、仰け反るような姿勢になる。


「もう。からかわないでくださいよ」


いくら私でも慎重になる。
別の意味で。どうせまたからかうんだ。


外灯が逆光になって、表情がよくわからない。


「―――、してもいい?」

「何をですか」


キスとか思わせて、過剰反応させて実はデコピンとか、絶対そんなノリ。
私は、きゅっと唇を結んで下から睨み上げる。


ふ、と笑い声が上から降ってきた。



「握り返したり、可愛いことするから 」



だから何、と言いかけて声にならなかった。
覆う影が濃くなって、一瞬近くを通った車のライトが目の前を照らして通り過ぎる。



避けなければ。

咄嗟のことだった。


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