恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
超、至近距離。

暗くてもこれだけ近ければ相手と視線が交わる。
見つめ合い、否。睨み合い。


「これ、じゃま」


藤井さんの声が少しくぐもって聞こえるのは、私の左手がその口を覆っているからだ。


隙間、数センチ。
シャッターぎりぎり、間に合った。


「邪魔してるんです。私、もうこういうお遊びしないことに決めたんです。でないと…無意味になっちゃうじゃないですか、せっかくけじめつけたことが」


キツく睨むけど、きっと近すぎて余り伝わらない気がする。


「お前の考え方って謎だな。今更操立てる意味あんの」

「操って。そんな意味じゃないですけど」


リアルであまり聞かない表現に、思わず唇が緩みかけた。


藤井さんが、屈めていた背を起こしたので漸く少し、空間ができた。
手の届かない距離でもないけれど、口元の手は離れて戻り距離を取ろうと少し胸を押す。



「いい加減、良いお兄さんするのも飽きてきたよ、俺」

「どっちかっていうと悪いお兄さんですよね?」


茶化そうとして見上げるけれど、すぐに逸らして俯いた。
だって、目がふざけていなかったから。


「そ、それに、藤井さん、別に私のこと好きとかじゃないでしょう」


気不味いのか怖いのか、自分でも判別不明の感情が、私の声を少し震えさせた。



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