恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
もう引越しなんて終わってると思うし。
言いますけど、異動になるとかで。


どこかは知らないんですけど。


このところ、ぎっくり腰で重い物持てなかったり、体調悪かったりしたのでもしかしたら本社の事務職とか教育の方に回るかもしれないとか。


私はそれくらいしか、聞かされてないんです。問い詰められたら、口割りそうだからって。



店に戻れば、土曜日の今日は客が溢れかえっていて格段に忙しい。
接客も商品補充もひっきりなしだ。


サボリが趣味の店長だって、この時期には空気を読む。
副店の俺が、早退なんて出来るわけもないし。


店が締まった後も、この時期には閉店作業だけじゃない。
翌日の配送準備で終電になることなんて、恒例みたいなもんで。



人もまばらの電車に乗って、うちに帰る前に三叉路を右に曲がった。


真っ暗闇の窓は、もう休んでいるからじゃなく。
集合ポストの名前も、外してあった。



「せめて引っ越すことぐらい話していけよ、薄情者め」



携帯を手に取ったが、かけようとは思わなかった。


流石に、胸に堪えた。


だってこれは、もう決定的。


明らかな、拒否の意思表明だろう。


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