恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「…じゃあ、お前、なんで俺から逃げるの」

「や…逃げては、いないよ」

「…逃げてるだろうが」


むす、と唇を尖らせた笹倉が言った。
私は、あらぬ方へ視線を逃がす。


手、放してくんないかな。
こういう、握り合ったりとか、変に照れるから。



「話そうかなと、思ったのよ、でも」


私は、観念した。
首を斜めに項垂れながら、ぽそりぽそりと言葉を落とす。


「…あの日、駅で三輪さんと一緒にいたじゃない。そのまま話そびれて、別にどってことはないんだけど、気が削がれちゃった…ってか」

「偶々帰り話しかけられただけで、何もない」

「それはわかってるけど」

「…やきもちやいた?」

「だから、気が削がれたの」


居心地の悪さを更に助長する、大きな手にすっぽり収まった手をなんとか放したくて。


指先をもぞもぞと動かすけれど、脱出させてはくれない。
軽く上目遣いで彼を伺ったら、さっきまでの変な顔から少し、にやついてるように見えて。


私ひとりで動揺してる気がして、イラついた。


「なんかもう、もやもやしたものとか、そういうのに振り回されたくないの。子供に専念したいしそうじゃなきゃダメでしょ、だから言わなかったの!」


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