恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「お前、それって」


笹倉の口元がますます緩んで、唇が震えていた。
それは、笑いを堪えているように私には見えて。


「何が可笑しいの」

「…―― いや、良い。よくわかった」


反対の手を挿頭して、制止を促すように掌を見せる。


何が良いんだ。
納得がいかず彼を睨んだら、握った手の親指が私の手の甲を撫でた。


「つまり、子供の為に最善を尽くせる自分でいたい、ということだよな」

「あ…あぁ、うん。そう」

「色気のない言い方をするとな」


……。
なんなんだ、いちいちかちんとくるな。


その、指でさわさわするのやめてほしい。
くすぐったい。


「ねぇ、とりあえず、放して。話できない」


気恥ずかしくて。
人前だし。

くすぐったいし。
空気が。


ふは、と吹き出すような声がして、彼の顔が可笑しそうに歪んだ。


「お前、こういうの苦手だよな。あの捕物の時よくわかった」

「も…面白がってないで普通に話そうよ」

「ヤル時は全然平気なのにな」

「それはそれ、これはこれなの!」


もう、うるさい。

今度こそ振り払おうと、手に強く力を込めたら。



「結婚しようか、子供のために」


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