恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「順序がてんでばらばらで申し訳ないけど、俺ら最初っからおかしいからな」


後ろに背中を凭せ掛けた姿勢のまま手を組み合わせて、笑いながら言った。


「大丈夫、俺はちゃんと恋愛してるから」


私は眉根を寄せた。


「誰と」

「この流れで、まだそう言うか」

「んなこと言ったって」

「俺はお前が好き」



軽口の延長みたいにそう言うから、軽く返そうとして唇が止まった。

テーブルからゆっくりと上向いた、彼の視線に捕まって。



「俺はお前が好きだから、何の問題もない」



そして。

勢いよく、制止の意味を含んで掌が挿頭された。



「返事は聞かないから。どうせまともな返事期待してない」



言われなくても、役に立たない唇だけど。

返事を期待してないなんて、玉砕覚悟みたいじゃないか。



「子育て終わって、爺さん婆さんになった頃に聞かせてくれればそれでいいわ」


「…随分と気が長い話で」


漸く出たのはそんな憎まれ口。


「なんなら死に際まで引っ張っていいよ」


死に際って。
事故とかで死に目に会えなかったらどうすんの。

夢枕にでも、立つかな。
そう考えたら、なんだかおかしくなって。


「…―― うん」


頷いた。


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