恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「は……」


私が頷いたのを確認すると、彼が脱力してテーブルに項垂れた。

そんなに緊張してたのか。
また私の手に重ねて来た指先が、少し震えていたから。


「良かった。もう会えないかもって思ってたから」

「…大げさな」

「大げさじゃねーよ、何処行ったかもわかんねぇし、恵美ちゃんから聞き出すのに結局年明けまで待たされて」


そうして、指先に力が篭められた。
なんだか、そんなふうに言われると。


さっきのセリフが、じわじわと実感を伴って。
ボディブローみたいに後から効いてくる。


『俺はお前が好き』


頭の中でリピート再生された途端、頬に熱が集まるのを感じて慌てて頭を振った。


「…何赤くなってんの」


そう問いかける彼も、若干赤い。


「うるさいな」


こういう話を笹倉とするようになるなんて、一年前は考えもしなかった。

…じゃあ、最近は。

藤井さんが現れて、恵美と喧嘩して、自分の状況を考え始めた時は。

少しくらい考えても、今更だと、似合わないことだとすぐにシャットアウトしてしまっていた気がする。

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