恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
返事はゆっくりで良いと言ってくれているけれど…かといってほんとに死に際まで待たせるのはどうかとも。


「なぁ、お前まだ歩ける?」


思考回路を遡っていると声をかけられて、焦点を彼に合わせた。


「うん?歩けるよ」

「じゃあ、指輪、見に行こう」

「え、指輪?」


彼が立ち上がって、私の脇にあるベビーカーを手にした。


「そう。のんびりしてらんないだろ、生まれる前にちゃんとしとかなきゃな」


ほら、と促されて私も立ち上がりながら、少し前の会話を反芻して。


「…あれ?」


あ、そうか。

結婚に頷いたことに、なるのか。

なんだか上手く言いくるめられた気がして、首を捻っていると



「何、指輪いらないの」



私がコートを羽織るのを待ちながら、彼の顔が不服そうに唇を尖らせる。


手はベビーカーの手すりを持って、自分が押す気満々の様子で立っていて。


今までの彼からは、余り想像できないその姿に、私は肩の力が抜けた。



「うん。指輪、欲しいかな」



貴方と、家族になろうかな。


彼が差し出すその手に、私から指を絡めた。


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