恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
少し沈黙があり、不思議に思い首を傾げた。


『…なんだ、自分でよくわかってるんだ』


意外そうな声音で、そう言われた。
…わかってますよ、それくらい。


「それより、今日は恵美とお泊まりのつもりだったのに。こっち連れ込まれちゃって。ごめんね」

『私は最初からこのつもりだったわよ。こっちはこっちで、藤井さんに奢ってもらって帰るから』

「……」


今日の流れは、全部恵美のシナリオどおりだったんだろうな。
あの時感じた予定調和は間違いではなかったってことだ。


恵美様には敵いません。




少し話して切ると、私はベッドから起き上がってリビングに顔を出した。


「もう平気?」


テーブルで店を広げている様子の笹倉が、顔を上げた。
恵美が買ってくれた、ベビー服を広げていたようで、ラッピングの包装紙が足元に落ちている。


此処に着いて、散々歩き回って疲れたからか悪阻が顔を出し、少し横になっていたのだった。


「平気。もう収まった。何、フライングしてるの」


私も早く見たかったのに。
彼が軽く手招きをするので、テーブルに寄ってその隣から手元を覗き込んだ。


彼の手には、新生児用の肌着が広げてある。
店でも見たけれど、こうして包装をとって手元で広げてみると。


「「ちっさ!!」」


声を揃えて言った。


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