恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「笹倉!」



プリンが有名なメーカーの場所で、笹倉の背中を見つけた。
声をかけると、体半分だけ振り向いて私を確認してすぐ前を向く。


近寄って並んで立つ。
ショーケースの中には、数種類のプリンが並んでいた。



「あ、これ」



その中の一つを、私が指さして言った。



「この、2層になってて底にカラメルのやつ、よく聞かれるよ。どこにありますかって」

「あと、ミルクプリンな」

「どれか買って帰る?」

「んー…でもこれから、まだ行くとこあるだろ。今度仕事上がりに買って帰るわ」



行こう、と彼が私の腕をとって歩き出す。
もう少し見て回るつもりのようで、ゆっくり周囲を見渡しながら進んだ。



「で、どうなった?仕事」

「産休後に退職願い書いて、契約社員で登録することになったの。一番美味しいパターンになっちゃって、いいのかなぁ」

「会社が良いって言ったんなら大丈夫だろ」



会社っていうか、言ったのは一条さんだけど。
彼なら多分、そのように上手く本社に掛け合ってくれるんだろう。


怖いけど頼りになる、ということが良くわかった。



「っていうか。ね」

「んー?」



気のない返事をしながら、チョコ専門店のギフトに目を向けている笹倉を、ちらりと流し見る。


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