恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「噂ってさ、笹倉知ってるの?」



土下座した?


とは聞けなくて、ちょっと遠目から攻めてみた。
そうしたら、ぴくんと肩が片方上がる。



「…………………

 …………………………別に」



間、長っ!


絶対知ってる、これ。
面白い反応が見れて、思わず噛み殺しきれなかった笑いが唇から洩れた。


私の苦笑に気がついたのか、彼が呆れたような視線を投げてくる。



「っつか、どの噂…?」

「えっ?どの、って。いくつもあるの?」

「いや、いくつもって程じゃ、ないけど…」



空中に目線を泳がせて口篭る様子に、何か言いづらいことなのかと察しがついて。
私は少し肩を竦める。



「もしかして、私の心配?別に気にしないで言ってくれていいよ、全く堪えないから」



大事な人がちゃんとわかってくれてればそれでいい。
何より、此処に戻る可能性はほぼ無いし。


私の様子を見て、少し気が抜けたのか。
笹倉が顎を片手で摩るような仕草をして、前を向いて歩きながら言った。



「まぁ、結構な、悪女が出来上がってる、かな」

「そりゃそうだろうねぇ。私とフロア歩いてて、笹倉大丈夫なの?」



余計に変な噂になって、働きにくくならないかと、今更ながら心配になった。


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