恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
長方形の箱には、大きいリングと小さいリングが二つ並んで、正方形の箱には透明の石が乗っかった、デザインリング。



「こういうのを、付ける日が来るとは思わなかったなぁ」



石の乗った方のリングを手にとろうとしたら、横から笹倉に奪われた。
右手の指先で光る輪っかを摘んで、左手を差し述べてくる。



「ん、手」

「いぃよ、自分で付ける」

「いいからやらせろって」

「エロい」



茶化しながらでもなきゃ、やってられないくらい照れくさい。


お互い多分、そうなんだと思う。
だって、二人共俯いて手元を見るばっかりで、ちっとも視線が合わないから。


良かった、こんなん結婚式で皆に見られながらとか冗談じゃない。



「いいから、お手」

「わん」



ほんとなら利き手が出るとこだけど。
彼が冗談混じりにしてくれたことだし。


空気を読んで、左手を乗っけた。


左手の薬指の先に、少しヒヤリとした硬質のものが触れて、ゆっくりと指を辿る間。


黙ってるのが気まずくて。



「プラチナって、永遠に色褪せないから結婚指輪に使われるんだって」



そんな誰でも漠然と知ってるようなことを口にした。

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