恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
今日は一応記念日となる日だし。


ワンピースにヒール低めのブーツで、確かに膝辺りは少し冷えるけれどタイツもしっかり履いてきたしコートもちゃんと羽織ってる。


私にしては珍しく、カジュアルになりすぎないようにと気を使ったのに。
なんで私が睨まれるんだ。


唖然と口が開いたままの男を余所に、笹倉は両手で私の頬を挟んで暖めるような仕草を見せた。


ところが、慈愛に溢れるその仕草の割に、表情は意地悪い。
彼の考えることなど、見え見えで。



「ほら、顔冷えてるだろ。お腹は?」

「大丈夫だって、最近そればっか」



ぺたぺたと顔中を触られて、男物のマフラーをぐるぐると首に巻かれる。
唇まですっぽり埋められた。



「心配だからだろ。こんなとこで立ち話して」

「だって呼び止められたから。会議お疲れ様。直帰で良かったの?」

「ん。元々シフトでは休みの日だったから。昼飯食った?」



向かい合ったまま髪を撫でてきて、引き続きイチャコラを続行しようとする笹倉を、ぽんぽんと拳で軽くノックして目線で彼の背後を示した。


そこには、居場所の無い某君が何か言いたげに片手を上げていて。



「あ、えっと悪かったな、邪魔して。俺仕事あるから、もう行くわ」



当然の如く、気が削がれたのだろう某君。
苦笑いしながら、声をかけるタイミングを探していたようで。


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