恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「豊田さん、流石に中まで入ってくるのは…」



マズいだろ、と思ったが、いつもの彼女ならそれくらい弁えているはずで。


恵美ちゃんの手には、携帯が握り締められていた。



「今、休憩行ってたらみさから!破水したって!」



携帯のメール画面を此方へ、向けてくる。
そこには『破水したから、病院行ってくる』と、全く愛想のない文面があり、美里らしいな、と思った。



「店長すんません、早退していいですか」

「わかった。いってこい。夏季商品の納品も俺やっとくわ」



それは最初から店長の仕事なんだが、まぁそれは置いといて。
立会いしたいからその時は、と前々からスタッフ全員に伝えてあったから問題なく了解はもらえた。



「私は無事産まれてから見に行くから…みさに頑張ってって伝えといてね。…もっと焦るかと思ったけど、瑛人君落ち着いてるね」

「慌てたって仕方ないだろ」



言いながら、最後に手にもっていた商品だけ包装してから行こうとせっせと手を動かしていたら。



「それ、慶事用の包装紙でしょ。包装の向きが仏事になってるよ…」

「………」



恵美ちゃんに指摘される。


…だめだ。
本当のこと言うと、今ちょっと、指先が震えてる。




< 387 / 398 >

この作品をシェア

pagetop