恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「ここはもう良いから早く行ってこいって」



バシッ、と強めに背中を叩かれて背筋が伸びる。
いつもこれくらい、頼もしいといいんだけどな。



「店長、俺が居ない間くらいはちゃんと店長の仕事してくださいよ」



少々の憎まれ口は日頃の恨みだ。
それでもありがたく、最敬礼のお辞儀をして更衣室に向かうためにバックヤードに入った。


その後を、恵美ちゃんが追いかけてくる。



「ね、車で行くの?電車?」

「あー…車は家に置いてるからこのまま電車で直で行く」



歩きながら携帯をポケットから出すと、美里からメールがあった。
開くと、恵美ちゃんに見せられたものと全く同じ文面だった。



「良かった、表情は普通だけど結構焦ってるみたいだから…事故ったら怖いし絶対電車で行ってね!」



心配そうに手を振る恵美ちゃんに見送られて、更衣室までのエレベーターに乗る。


俺も、冷静なつもりでいたが。


だめだ、妙に思考回路まで浮ついている。
更衣室のロッカーの鍵が上手く指に引っかからず、ポケットから出てこない。


美里の出産する病院まで、車でも電車でも2時間だ。
どっちにしろ、車を取りに戻るよりは電車とタクシーで向かった方が早いのは確かだった。


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