恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「私も見たい」

「うん」



瑛人が、私の顔の高さまで腰を屈めてくれた。
腕の中の赤ん坊は、想像よりもずっと小さくて、緩慢な動きでどこ見てるのかもよくわからなくて。


それでも、ちゃんと生きている。



「…どっち似とかは、よくわかんないね」

「そうだな。…お前、身体大丈夫?」

「遅っ」

「…放心してて、今やっと思考回路が回り始めたんだよ」



うっかり笑いながら突っ込むと、少し拗ねてしまったみたいで。
唇を尖らせて、小さな声で言った。



「…まじで、死んじゃうんじゃないかって焦った」

「死なないし。ちゃんと産んだし」

「うん」



最近心配性の彼には、心臓に悪かったのかもしれない。
途中、よく覚えてないからもしかしたら白目でも剥いてたのかもしれないし。





「写真撮りますね」



助産師さんが、私達3人の写真をポラロイドに納めてくれた。
後で写真立てに入れてプレゼントしてくれるらしい。



「安産で良かったですよね。超スピード出産。4時間程しかかかってませんよ」



聞き捨てならないそのセリフに、私達は一瞬、言葉を失って。



「「安産?!あれで?!」」



ふたり揃って同じセリフが分娩室に木霊する。
時計を見れば、笹倉が着いてから1時間半程しか経っていなかった。


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