恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
カナちゃんに商品の包装を任せて、私は頭一つ分上から見下ろす不愉快な男に会計をお願いしなければならない。



「お会計2100円でございます。嘘の名前ってわかってて連呼しましたね?」

「まぁ、空気でわかるよな。領収書、この社名でお願い」



こないだの空気か今の空気かしらないけれど。
こんなことなら、せめてもう少し現実味のある名前名乗っておくんだったと、あの日の自分の思考回路を切断したくなる。


よりにもよって携帯小説の主人公の名前なんて、如何にも、じゃないか。
だってまさか再会するなんて思わないし!


現金を預かって、渡された名刺の社名で領収書を作ると、準備のできた商品と持って再び男の前に出る。



「お待たせいたしました。こちら領収書でございます」

「今日は何時に終わる?」

「勤務中ですのでやめてください。名刺お返し致します」



接客中だというのに私はすっかり仏頂面だ。



「それ、あげる。どうせ前に渡したヤツ、捨てただろうし」

「結構です」



捨てたどころか、どうしたかも覚えてないよ。



< 56 / 398 >

この作品をシェア

pagetop