恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「え、まじで?」

「うん。店内、騒がしいし。端の方で小さめの声で話せば誰も聞こえないだろ。さくっと楽になれ」



諦めかけた頃の急展開に軽口を返す余裕もない私は、黙って携帯で時間を確認する。


今はまだ、7時過ぎた頃。
二人がここへ来るには、後2時間くらいかかるだろう。



「カナちゃんだって用があるかもしれないしさ、今日は仕切り直しでまた今度にしようかと思うんだけど」

「今休憩中らしくて、速攻返信きた。終わったらダッシュで行きます、だって」

「……」

「ヘタレ」



ぐぅの根も出ない。


私はあと2時間、この胃のモヤモヤと戦わなくてはいけないこととなった。
お酒どころか、食べる気力も削がれてしまい、向かいに目を向ければ



「藤井さんは飲まないんですか?」

「俺、車だから。三輪さんは好きなだけ飲んでいいよ。何か頼もうか?」



やけに距離の近くなった二人がそこにいる。

このエロおやじ。
あ、3つしか違わないんだっけ。


お酒入れて、恵美との話をぐだぐだにするわけにもいかないので、私は烏龍茶に切り替えた。


笹倉とぽつぽつ会話をしながらもやはり上の空で。
結局恵美と何を話せばいいのかばかりを考えていた。


そういや、恵美はこのエロおやじと再会したことをまだ知らない。


ナンパされた日のことを思うと、恵美が彼を見た途端に眉間に皺を寄せる様が想像できて、尚更話をするのが怖くなってしまった。


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