恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「私が口出すことじゃないのにね」



言いながら斜めに私を見上げる顔に、私は心底、ほっとした。
眉を少し八の字にして気まずそうにだけれど、笑ってくれていて、私も慌てて言葉を探す。



「違うの、恵美は心配してくれてたのに、私、適当な言葉しか返したことなかったから、だから、ごめん」


そう、私が謝りたかったのは、これだったんだ、と言葉にしてやっと気がついた。


「お母さんの着信のこととか言ったら、私がいい加減なのまでお母さんの所為になりそうで、言いたくなかったんだよ」



お互い一旦言葉が途切れて、無意識に出た空気の抜けるような溜息は二人同時だった。
おかしくなって、苦笑する。



「笹倉とのことも、いつかちゃんとしないといけないのはわかってるから」

「わたしね」



このあたりの話題は、誰にも聞かれたくないので特に声を潜めた。
恵美もそれに習ってくれて、僅かに肩を寄せ合いながらの会話。



「瑛人君とみさが、本当に付き合ってくれたらなと思ってる」


驚いて見た恵美の横顔は、何を思ってるのかわからなかったけど口元は柔らかかった。


「でも、私達そんなの今更だし」

「うん、それでも。ま、付き合い方なんて人それぞれだし、今のままでもいいのかもしれないけど」



恵美のドリンクはまだ来てなかったから、少しちょうだいといって、私のグラスから一口飲んだ。


「大事な友達二人が、信頼しあってて。付き合ったらいいなって思ってたのに、フリとか言うから。ちょっとムキになっちゃった」



ぺろ、と小さく舌を出して、バツが悪そうに笑った。


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