恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
十分余裕をもって早めの電車に乗るつもりでいたのに。
あれから大急ぎで準備したもののギリギリの電車になってしまった。


ただいま電車を降りてホームを全力疾走中だ。
待ち合わせの改札口まで距離がある。


せっかくシャワーしたのにまた汗だくだ、とか頭の隅っこをかすめたけれどとにかく走る。
改札口の向こうに、恵美の姿が見えたのでパスケースを持った手を上げた。


恵美は腕時計とこちらを交互に見ているが、近づくにつれ表情がにやけているのがわかる。
前を行く人に並んで改札を抜けるのももどかしい。


「おまたせ!!ってか、間に合ったよね?」


弾む息を整えながら、恵美の腕時計を一緒になって覗き込む。


「ちっ。惜しい、1分前だ。もうちょいだったのに」


ぶう。と効果音が鳴りそうなくらい頬を膨らませる恵美と、ほっと一安心の私。


大手の洋菓子メーカー勤務とはいえ、一販売員の給料は意外と薄い。
ランチを驕らされるのは是非避けたいところ。


以前、待ち合わせた時に寝坊して大遅刻をやらかしてから、なんとなく出来たルールだ。
彼女は時間に厳しい。



「社会人たるもの、10分前行動は当たり前よね?」
にっこり笑う。



はい、ごもっともです。


同じ社会人5年目、25にもなるというのに未だに出勤もギリギリの私。
反省します。
< 7 / 398 >

この作品をシェア

pagetop