恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~



「カナちゃん、昨日はごめんね。途中で帰っちゃって。大丈夫だった?」



相変わらず店は暇だ。年末商戦に入るまで、暫くはこの調子だろう。
だから販売員同士、ついつい私語に走りがち。


かといって、フロア全体が閑散としてるからできる限り小さな声で話さなければ異様に響いたりするのだけど。



「私は全然!大丈夫ですよぉ。美里さんこそ平気でした?気分悪かったって聞きましたけど…何かありました?」



何もなかった筈はないと思ってるだろうけど、踏み込んでいいのか様子を伺っているのがわかった。


気を使わせてしまって、眉を八の字に寄せて笑った。



「んー…恵美、なんか言ってた?」



彼女は、今日は休みらしかった。



「なんか…というか。喧嘩してるんだなっていう。詳しくは多分、誰もわかってないけどその空気は全員に伝わりました」



全員。
伝わった空気の重さを予測すると、申し訳なさだけが降り積もる。


恵美もあの後、全く何もなかったように装うことはできなかったんだろう。



「美里さん、猫背猫背。覇気がさっぱりなくなってますよ」



まさにしょんぼりといった風で、肩が落ちてしまっていたらしい。
ふぅ、と一息ついて背筋を伸ばした。


こんな姿勢で立ってるところ、フロア長にでも見つかったら速攻バックに呼び出しだ。



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