シルティアの魔術師
「私が前世の記憶を思い出したのは、数年前でした。その時は、シルティアの王女なんて立場に生まれ変わった自分の運命を呪ったものです。」


姫君は、ふと目を伏せました。


「でも今のシルティアは魔術師の差別もなく、皆が平和に暮す国になっていました。
ーそして『カトリーナ』は多くの人々から王女という身分とは関係なく、愛されていた…。それは凍てついた私の心を、少しずつ溶かして行ったのです。」


姫君はゆっくりと上を見つめます。
その目には、うっすらと涙が浮かんでいるように見えました。


「ー皮肉にも、私の心を凍らせたのも溶かしたのも、他ならぬシルティア自身でした。私…今は、シルティアを愛しています。」
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