シルティアの魔術師
「ーいらっしゃいましたよ。彼はもう…帰られました。」



ー彼の本来、在るべき場所にですかー?



…その言葉は、私の喉の所まで来て消えて無くなりました。



その時の姫君の笑顔は、あまりにも美しく、悲しいものだったからー…。





「ーさぁ、稽古を始めましょう。先生、シオン殿、よろしくお願いします。」


次に姫君が見せた笑顔は、また元のものに戻っていました。


私と剣の師匠は姫君の言葉に押され、準備を始めます。

剣の師匠を見ると、彼は未だに何が起きたか分からないらしく、終始首を傾げていらっしゃいました。



そしてまた、いつものシルティアの午後が始まりましたー。
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