君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
突然現れた上司に、営業部にどよめきがはしる。

そりゃそうだ。俺でさえ、たまにしか会わない副社長が、なんの前触れもなく現れたんだから。


驚きを隠しきれずにいる部下一人一人に、ご丁寧に挨拶をしている副社長の元へと足早に向かう。


「すみません、副社長。おはようございます。早朝から足を運ばせてしまい、申し訳ありませんでした」


「おはよう、東野君。いやいや、勝手に来ただけだから気にしないで。たまにはみんなの現場も、見ておかなくちゃだしね」


「はぁ...」


それにしても、副社長がわざわざこんな早朝から来るなんておかしい。何かあるに違いない。


すると副社長は辺りを見回す。


「えっと...櫻田君はまだ出勤してないのかな?」


櫻田?


「あっ!そうか!!秘書はまず秘書課に行くんだったね。うっかりしてたよ。じゃあ東野君だけに伝えておくよ」


「はい」


仕事のことか?櫻田も関係あるのか?

副社長の前でだけは、何もしていなくても、変な緊張がはしる。


「急で悪いんだけど、月曜から櫻田君と3日間、大阪まで行ってもらってもいいかな?」


「えっ、櫻田とですか?」


「そう。いやね、新規の取引先なんだけど、ちょっと気難しい人でね。女性の櫻田君が同席してくれたらな、と思ってね。どうかな?」


どうかなって...。
そんなの、答えなんて決まってるじゃないか。


「勿論、私と櫻田でよろしければ行かせて頂きます」


「よかった!じゃあ悪いけど頼むね。スケジュールはどうにか調節頼むよ」


片手を上げ、機嫌良く出ていく副社長に頭を下げ、見送る。


「びっくりした。いきなり副社長だし」


「藤原」


俺の肩に手を置き、そっと囁いてきた。


「な~んか怪しいんじゃねぇの?櫻田と二人でとか、さ?」


良く分かってるじゃねぇか。


「そんなの、俺が一番怪しいと思ってるよ。だけど、仕事だ。上司が行けと言うなら行くまでさ」


藤原の手を払い除け、自分の席へと向かう。


「さっすが部長様だこと!」


そう言いながら、なぜか俺のあとをついてくる藤原。


「東野はさぁ、大丈夫なわけ?櫻田と三日間も二人っきりなんてさ」


思わず足が止まる。


そんなの副社長に言われた時から思っていたさ。


「何を言ってんだよ。仕事だ。別になんとも思わない」


「えっ?」


そうさ、これは仕事だ。


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