君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~

そう自分に言い聞かせ、スケジュールの確認に入る。

「...驚いた。それさ、東野マジで言ってるわけ?」


「えっ?」


顔を上げると、驚いた表情を俺に向ける藤原。

何に対して藤原は驚いているんだ?

「昔の東野だったらさ、第一声は『最悪だ』とか、『あり得ない』とか、最悪の場合断ったりするんじゃねぇの?」


「......」


「なに?その顔だと無意識だった?いつもの東野らしくないんじゃねぇの?」


そう言うと、藤原は自分の席へと戻っていった。

本当だよ。いつもの俺らしくない。

いつもの俺だったら藤原の言う通りの言葉たちが出てくるはず。


なのに、俺は...。

スケジュールを持つ手が、自然と口元へと移動する。


自分の変化に自分で気付かないなんて...。
重症じゃねぇか、俺。


「東野部長!すみません、ちょっといいですか?」


「あっ、あぁ」


それでも仕事は待ってくれない。俺は気持ちを入れ替え、やってきた部下の話に耳を傾けた。

また仕事以外の感情に蓋を閉めて。


ーーーーーーーーー

ーーーーー

月曜日、早朝6:35
まだ人もまばらな駅のホーム。

スーツケース片手に櫻田を待つ。


「さすがに早すぎだよ、な」


どんなに早く来たって20分前だろ。
なのに、なんで俺はこんなに早く来てしまったんだろう。


自分の謎の行動に溜め息を漏らしつつも、視界に入り込んできたのは櫻田の姿。


「さくら...だ」


俺を探してると思い、声を掛けようとしたが、言葉が続かない。


櫻田の様子がいつもとは違い、決して俺を探しているっていう様子には見えなかったから。


とぼとぼと数歩進んでは立ち止まり、後ろを振り返る。

その繰り返し。


なんだ?後ろに誰かついてきてるのか?それともー...。

なんだ、これ。イライラする。俺はここにいるのに、どこを見てやがる。

足は真っ直ぐに櫻田の方へと進み、いまだに気付かない櫻田に、何事もなかったかのように声を掛ける。


「櫻田、こっちだ」


「はっ、はい!!」


案の定、驚き声を裏返す櫻田。

こんな俺に気付かれたくなくていつもと変わらぬ態度で接し、列車へと乗り込む。

ここか。

席を見つけ、荷物を上に押し込み窓際に座る。


櫻田も同様に荷物を上に置き、そっと隣に座ってきた。


けっこうヤバイな。

心拍数が上がるのが分かる。

こんなに女が密着してるっていうのに、嫌な気がしない。

むしろそれどころか...。

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